2:「3つの財布」があっても、夜は眠れなかった 個人事業主・田中さん

「……あれ?」

通帳を見つめ、田中は手を止めた。

「3つの財布」を始めて半年。
事業資金、生活資金、将来資金。
ちゃんと分けたし、守っている。

売上は悪くない。
生活費も抑えている。
将来資金も積み立てている。

それでも、なぜか不安が消えない。

思い当たる理由は「いくら使っていいのか分からない」

口座残高から
税金、外注費、未回収の売上を頭で引いていく。
だから実際に動かせるお金がわからなくなっていく。

「今月は仕方ない」

そう思って生活費を多めに使った月、
事業で予想外の出費が重なった。

次の日、将来資金の口座を見つめ、違和感を感じた田中。

「戻しておけば、大丈夫??」

この言葉こそ、これまでの言い訳だったと気づいたのだ。

その夜、鈴木に電話した。

「分けたのに、不安が消えない」

「そうか。まあ、分けただけだからな」

鈴木は当たり前だと言わんばかりだ。

「その判断を一人でやるのはむずかしいんだよ。
使っていい金、触るなって金、
自分自身で冷静に決められるかな」

田中は何も言えなかった。

財布を分け始めたことで、
自分がお金を感覚で扱っていたことが分かった。
ほかに足りないものがあることも。

最終話 「3つの財布」の本当の完成に続きます

※この物語はフィクションです。
実在の人物・団体とは関係ありません。
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